一つ、思い出してほしいことがあります。
英語が「好きだ」と初めて感じた瞬間のことです。
中学の頃、Bon Joviの”It’s My Life”を辞書を引きながら訳してみた。バックストリート・ボーイズの歌詞を、ノートに書き写した。『タイタニック』を観て、セリフを真似してみた。ビートルズの”Let It Be”が、ある日突然、意味ごと聞こえた瞬間の鳥肌。
あのときの気持ち、覚えていますか?
英語のテストでいい点を取りたかったわけじゃない。「この言葉の向こう側にある世界に触れたい」あのとき確かにあった、あの情熱。
「英語を仕事にしたい」と思う人の多くは、まず英語力を上げることから始めます。でも、英語力だけ上げても「で、何に使うの?」が決まっていなければ、結局また迷子になります。
必要なのは、あなたが人生で積み上げてきた経験の中から、「これを英語と掛け合わせたら面白いかも」というものを見つけること。それが見つかると、英語の勉強にも方向が生まれるし、あの頃のワクワクも戻ってきます。
この記事では、5つの質問を使って、それを見つけるワークをやります。紙とペンを用意してください。大事なのは「考える」ではなく「書く」こと。頭の中にあるものは、文字にして初めて形になります。
質問1:英語を抜きにして、人より詳しいことは何ですか?
最初の質問は、英語とは関係ありません。
仕事のこと、趣味のこと、生活のこと。なんでもいいので、「これについては人よりちょっと詳しい」と思えることを書き出してください。
- 経理の仕事を15年やってきた
- パンを焼くのが好きで週末は必ず焼いている
- PTA会長を2年やった
- 接客業で10年以上クレーム対応をしてきた
- 日本のドラッグストアの商品にやたら詳しい
大きなことでなくていいんです。「人に聞かれたら30分は話せるかな」というレベルで十分。資格や肩書きではなく、あなたの時間が一番多く注がれてきた場所はどこか。それを思い出してみてください。
ここで出てきたものが、英語と掛け合わせる「もう片方の手札」になります。
質問2:そこに英語が加わると、何が変わりますか?
質問1で書いたものを眺めながら、「もしここに英語力があったら、何ができるようになるだろう?」と想像してみてください。
たとえば「経理15年」。英語ができれば、外資系企業の経理ポジションに手が届くようになる。日本企業の海外子会社とのやり取りを任される可能性も出てくる。
「接客業でクレーム対応10年」。英語ができれば、外国人観光客への対応スタッフとして価値が上がる。インバウンド関連の企業から声がかかるかもしれない。
「日本のドラッグストアに詳しい」。英語ができれば、海外向けに日本の商品を紹介する仕事がある。越境ECの商品説明を書く仕事もある。
「PTA会長を2年」。調整力やファシリテーション能力は、英語を使うどんな仕事でも活きます。
ポイントは、英語力そのものが武器になるのではなく、「今ある強み × 英語」で選択肢が広がるということ。この掛け算のイメージが持てると、「英語を仕事にする」の形がぐっと具体的になります。
ここで一度、手を止めてください。
ここまで書いてみて、「でも、こんなことが本当に武器になるの?」と思ったかもしれません。
正直に言うと、その疑いはもっともです。書き出しただけでは、まだ何にもなっていない。
でも、ここからが面白いんです。
「ただの経歴」が「武器」に変わる瞬間があります。それは、「この力を必要としている人がいる」と気づいたときです。
あなたの経験と英語を求めている場所が、どこかにある。その場所が見えたとき、書き出したものが急に意味を持ち始めます。
次の質問で、その「場所」を探しにいきましょう。
質問3:英語を使って、どんな生活がしたいですか?
ここでは「仕事の内容」ではなく「生活の形」を聞いています。
- 在宅で、自分のペースで働きたい
- 今の仕事を続けながら、副業で英語を使いたい
- 週に数時間だけ英語を使う仕事がしたい
- 収入より、やりがいが大事
- 月に3万円でもいいから英語で稼ぎたい
- いずれフルタイムで英語を使う仕事に転職したい
正直に書いてください。見栄は必要ありません。
「英語を仕事にする」の形は一つではありません。今の会社にいながら英語を使う業務を増やす人もいれば、フリーランスで英語のライティングをする人もいる。外資系に転職する人もいれば、副業として週末だけ英語を使う人もいる。
まず生活があって、その中に英語の仕事をどう収めるか。この順番が大事です。
質問4:あなたの英語を届けたい相手、または一緒に働きたい相手は誰ですか?
「世界中の人」は答えになりません。もう少し具体的に考えてみてください。
- 海外のクライアントと直接やり取りしたい
- 外資系企業で外国人の上司のもとで働きたい
- 日本に来る外国人観光客をサポートしたい
- 日本文化に興味がある海外の読者に向けて書きたい
- 英語を使ってリモートで海外のチームと仕事がしたい
質問1で出てきた「自分の中にあるもの」と、質問4で見えてきた「届けたい相手・一緒に働きたい相手」。この2つが重なるところに、あなただけのポジションがあります。
質問5:今日、英語で1文だけ自分のことを説明するとしたら?
最後は、実際に書いてみる質問です。
質問1〜4で出てきたことをもとに、「英語で自分を一文で説明する」としたら何と書きますか。
I’ve been managing corporate accounts for 15 years.
I know more about Japanese drugstores than anyone I’ve met.
I spent two years leading a PTA with 200 parents who never agreed on anything.
文法が完璧じゃなくていい。1文でいい。でも、この1文を書いた瞬間に、あなたの英語は「勉強」から「自分を伝える道具」に変わっています。
その変化は小さく見えるかもしれません。でも、「英語を勉強している人」と「英語で自分を語れる人」の間には、想像以上に大きな溝がある。今あなたは、その溝を越えた一歩目を踏み出したんです。
このワークで見えてきたものは、あなただけの「地図」
5つの質問に答えたら、書いたものを眺めてみてください。
- 自分の中にあるもの
- 英語が加わると何が変わるか
- 望む生活の形
- 届けたい相手
- 最初の一歩
完璧に答えられなくても大丈夫です。空欄があってもいい。大事なのは、「自分の中を覗き込んだ」という事実です。
最後に、一つだけ伝えたいこと
英語を使って世界と接点を持てる日本人は、まだ圧倒的に少ないんです。
外資系企業で日本の現場を英語で説明できる人。海外のクライアントに日本の商品やサービスの魅力を伝えられる人。日本で暮らす日本人の視点を、英語で世界に届けられる人。どれも足りていません。
あなたの経験と英語を必要としている場所が、世界のどこかにある。
そして、ここで見つかった「自分の中にあるもの」を、英語でどう形にしていくか。その具体的な方法は、次の記事:英語で「書く」という選択肢|話す・翻訳する・教える・書くを比べてみた
でお伝えします。